ANYCOLOR株式会社が運営する大手VTuberグループ「にじさんじ」。その中でも、男性VTuberとしてトップクラスの人気を誇るのが葛葉（くずは）である。2018年のデビュー以来、驚異的なペースでファンを獲得し続け、2021年9月には男性VTuber及びにじさんじ所属ライバーとして初めてYouTubeチャンネル登録者数100万人を突破するという快挙を成し遂げた。本レポートでは、その圧倒的な存在感の源泉を探るべく、彼の公式プロフィール、多岐にわたる活動内容、そしてファンの間で囁かれる「前世」や「顔バレ」に関する情報まで、提供された資料に基づき徹底的に解剖していく。
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I. 葛葉：にじさんじを代表するカリスマ吸血鬼ゲーマー
A. プロフィールを解剖
デビューからにじさんじ所属へ
葛葉のVTuberとしてのキャリアは、2018年3月8日に個人勢としてスタートした。当初は特定の企業に属さず活動していたが、その才能を見出され、いちから株式会社（現ANYCOLOR株式会社）からのスカウトを受ける。慎重な検討期間を経て、2018年7月30日、ゲーム配信に特化したグループ「にじさんじゲーマーズ」の一員として正式にデビューを果たした。その後、にじさんじゲーマーズは本体グループである「にじさんじ」へと統合され、彼は現在、にじさんじを代表するライバーの一人として活動している。
吸血鬼という設定
葛葉には「ニートのゲーマー吸血鬼」という公式設定が付与されている。年齢は100歳を超えており、本名はアレクサンドル・ラグーザ（Alexandr Lagusa）、家族からはサーシャ（Sasha）という愛称で呼ばれている。人間界にかぶれた父親の意向で数年前に家族と共に人間界へ移住してきたが、部屋に引きこもってゲームばかりしている自堕落な生活を送っている、というのが初期の基本設定である。この設定は「親の甘い蜜を吸い続ける」という表現で繰り返し強調されている。
身の回りの世話はペットのブタにしてもらっているというユニークな設定も特徴的だ。個人勢時代には、このブタがイラストを描いていたという逸話もある。ただし、一部資料では、後に家族は魔界へ戻り一人暮らしをしている、配信業で忙しくなりニートとは呼べない生活を送っている、といった設定の変遷や補足も見られる。配信を始めた動機についても、「石油王にプロポーズされるため」や「楽に金を稼ぎたいと思ったから」、「大金持ちと結婚するため」といった、金銭欲に根差したコミカルな理由付けがなされている。
これらの設定の細かな変化は、VTuberのキャラクター設定が必ずしも固定的なものではなく、活動期間やコンテンツ展開に応じて更新されたり、ユーモラスな味付けが加えられたりすることを示唆している。キャラクターの背景設定は、厳密な正典というよりは、むしろ彼のパーソナリティを表現し、エンターテイメント性を高めるための要素として機能していると言えるだろう。
性格描写
公式プロフィールや自己紹介において、葛葉の性格は一貫して「見た目にそぐわず我が儘で気まぐれな子供っぽい性格」と表現されている。他にも、「天上天下唯我独尊」「マイペース」「傲慢」「守銭奴」「調子に乗りやすい」、「怠惰」「無気力」「テンションの浮き沈みが激しい」といった特徴が挙げられている。彼自身も「我慢ができない性格」「本能や衝動で生きるタイプで、理性が足りてない」と自己分析している。一方で、「意外とファン思い」といった側面も指摘されており、単なる悪童キャラクターに留まらない多面性も示唆されている。
このような一貫性のある、しかし単純ではないキャラクター像の提示は、彼の魅力の重要な要素となっている。予測可能な「葛葉らしさ」を保ちつつも、時折見せる意外な一面が、ファンを引きつける強いブランド力を形成していると考えられる。
嗜好
好きなものとしては「お金・血・ゲーム・プリン」、嫌いなものとしては「トマト・ピーマン・炎・努力」が挙げられている。吸血鬼設定とゲーマー設定、そして金銭欲や怠惰な性格を反映した嗜好と言える。
葛葉：基本情報
| 項目 | 詳細 | 出典例 |
|---|---|---|
| VTuberデビュー日 | 2018年3月8日 (個人勢として) | |
| にじさんじデビュー日 | 2018年7月30日 (ゲーマーズとして) | |
| 誕生日 | 11月10日 | |
| 身長 | 178cm | |
| 体重 | 約60kg～62kg | |
| イラストレーター | 本田ロアロ | |
| 所属 | にじさんじ (ANYCOLOR株式会社) | |
| 本名 (設定) | アレクサンドル・ラグーザ (Alexandr Lagusa) | |
| キャラクター名 | 葛葉 (Kuzuha) | |
| 愛称 (設定) | サーシャ (Sasha) | |
| 年齢 (設定) | 100歳以上 |
B. ステータスとデザイン
基本的な身体情報
公式情報によれば、葛葉の身長は178cm、体重は約60kgから62kgの間とされている。年齢は設定上100歳を超えており、誕生日は11月10日である。
外見的特徴
彼のビジュアルは非常に特徴的である。銀髪に赤い目（アルビノを思わせる特徴）、そして目の下の濃い隈がトレードマークとなっている。普段はジャージ姿でいることが多く、これは彼の怠惰な性格設定を反映している。また、腰から蝙蝠の羽を生やす能力も持っているとされる。
イラストレーター
この魅力的なキャラクターデザインを手掛けたのは、イラストレーターの本田ロアロ氏である。本田氏は美麗で洗練された男女のイラストで定評のある「神絵師」として知られており、にじさんじでは葛葉の他に長尾景のデザインも担当している。
II. 葛葉の活動領域：ゲーム、音楽、そしてコラボレーション
葛葉の活動は多岐にわたるが、その中心には常にゲーム配信がある。しかし、彼の魅力はそれだけに留まらず、音楽活動や他のライバーとのコラボレーションにおいても大きな成功を収めている。
A. ゲーム配信の達人
活動の中心
ゲーム実況配信は、葛葉の活動の根幹をなすものである。彼のプロフィール自体が「ゲーマー吸血鬼」であり、配信時間の多くをゲームプレイとその実況に費やしている。
多様なゲームジャンル
彼は特定のジャンルにこだわらず、幅広いゲームをプレイする。初めて遊んだゲームは『ワリオランド2 盗まれた財宝』で、『メタルギアソリッド3』に衝撃を受けたと語っている。その後、『コールオブデューティ』をきっかけにFPSにのめり込み、『Alliance of Valiant Arms (AVA)』、『PUBG』、『Apex Legends』といった対戦型オンラインゲームで高いスキルを発揮してきた。一方で、『リズム天国』のようなリズムゲームや、コミュニティで人気の『League of Legends (LoL)』などもプレイしており、その守備範囲の広さを示している。
配信スタイルと個性
葛葉のゲーム配信は、しばしば長時間に及ぶことが特徴とされる。そのスタイルは、クールな外見とは裏腹な無邪気さや、独特の煽りトークや会話の「プロレス芸」、印象的なリアクションや発言によって特徴づけられる。『PUBG』配信中にチーターに遭遇した際に発した「やってんねぇ！」という言葉は、一時期彼の代名詞となり、他の配信でも多用された。ゲームプレイにおいては、時に彼の衝動的な性格が反映され、リスクを顧みず前に出てしまうこともあるという。しかし、その高いゲームスキル、特にFPSにおける実力は広く認められている。
リスナーとの交流
配信中は、リスナーのコメントを読み上げながら雑談を交わすことも多い。ゲームプレイ中の雑談だけでなく、雑談をメインとした配信も行っており、リスナーとの双方向的なコミュニケーションを大切にしている様子がうかがえる。
B. 音楽活動：カバーからメジャーデビューへ
「歌ってみた」での成功
ゲーム配信と並行して、葛葉は「歌ってみた」動画の投稿も行っており、その歌唱力は早くから注目されていた。特に、Kanaria氏の楽曲「KING」のカバー動画は3200万回再生を超える驚異的な記録を打ち立て（資料によっては2700万回再生超とも）、歌い手としての彼の人気を決定づけた。
メジャーデビューと音楽キャリア
本格的な音楽活動は2021年11月から個人名義で開始された。同年11月10日、自身の誕生日を記念して開催された初のソロイベント『Kuzuha Birthday Event「Scarlet Invitation」』にて、ユニバーサルミュージック内のレーベルVirgin Musicからのメジャーデビューが発表された。そして、2022年3月9日には待望の1stミニアルバム『Sweet Bite』がリリースされた。
ボーカルスタイルと動機
彼の歌声は、特徴的なハスキーボイスに感情を込めた表現力が魅力とされている。彼自身はまだ自分の声に掴みきれない部分があると感じつつも、アーティストとして自身の声を個性として解釈していく意欲を示している。音楽活動への強い動機となったのは、2019年の「にじさんじ Music Festival」でのステージ経験だったという。観客からのリアルな歓声や会場の熱気を肌で感じ、「歌ってすげえ！」と感動し、音楽への愛情が深まったと語っている。この経験は、ファンとの繋がりを強く実感する機会でもあった。
参照：ビルボードジャパン
C. ユニット活動：絆と相乗効果
葛葉の活動において、他のライバーとのユニット活動は欠かせない要素である。
ChroNoiR (クロノワール)
最も代表的なユニットが、同じくにじさんじ所属の叶（かなえ）との「ChroNoiR」である。にじさんじゲーマーズ時代から意気投合していた二人は、共にグループを代表する凄腕ゲーマーであり、公私にわたって親しい間柄とされる。オフの日には二人で映画を観に行ったり外食したりする仲で、その様子が配信で語られることもしばしばある。ユニットとしてのYouTubeチャンネルも持ち、2024年には大阪城ホールでのワンマンライブ「Welcome to Wonder Wander World」、2025年には日本武道館でのイベント「くろのわーるが武道館でなんかやる」の開催が予定されるなど、絶大な人気を誇る。配信クリップからも、二人が頻繁にゲーム等で共演している様子が確認できる。
ド葛本社 (どくずほんしゃ)
ドーラ、本間ひまわり、社築（やしろきずく）と共に結成した家族ユニット「ド葛本社」も人気が高い。2019年から2024年にかけて、オフラインミーティングや家族旅行企画、オンラインライブなど、様々なイベントを開催してきた。
その他のコラボレーション
これら以外にも、にじさんじゲーマーズとしてのイベント出演、にじさんじフェスやAR STAGEといった大規模なにじさんじ全体のイベントへの参加、他のライバー（レヴィ・エリファ、不破湊など）の3Dお披露目配信へのゲスト出演、Vtuberlandや京まふといった外部イベントへの参加など、幅広いコラボレーションを行っている。また、VCR GTAのようなストリーマーが多く参加する企画や、カスタムゲームにおいては、スタンミ、SHAKA、k4senといったにじさんじ外部のストリーマーとも共演している。
これらの活動は、葛葉の成功が単一の要因によるものではなく、卓越したゲームスキル、魅力的なパーソナリティ、音楽的才能、そして戦略的なコラボレーションが相互に作用し合った結果であることを示している。多様な才能とプラットフォームを活用することで、強固なブランドと広範なファンベースを築き上げる、VTuberとしての成功モデルの一つと言えるだろう。
D. ファンとの繋がり：ライブイベントとメディア露出
ソロライブイベント
葛葉はファンとの直接的な繋がりを重視しており、大規模なソロライブイベントを成功させてきた。前述のメジャーデビュー発表の場となった『Kuzuha Birthday Event「Scarlet Invitation」』（2021年、Zepp Haneda）、そして『Kuzuha Solo Event “Kaleidoscope”』（2023年、東京ビッグサイト）は、彼のキャリアにおける重要なマイルストーンであり、ファンとの絆を深める貴重な機会となった。彼自身が語るように、ライブパフォーマンスはファンとの繋がりを実感する上で、デジタル上の交流とは異なる特別な力を持っている。
グループ・全体イベント
ChroNoiRやド葛本社といったユニットでのライブイベント、そしてにじさんじ全体のフェスティバルやコンサートへの参加も、ファンとの接点を多様化させている。これらのイベントは、VTuberというデジタルな存在が、現実の空間でファンと熱狂を共有する重要な場となっている。
メディアでの活躍
彼の活躍はオンラインだけに留まらない。『VTuberスタイル』、『Skream!』、『B’s-LOG』といった雑誌への掲載に加え、人気VTuber渋谷ハルと共に『anan』特別編集版の表紙を飾るなど、メディア露出も増えている。さらに、『別冊コロコロコミック』には、壱百満天原サロメ、花畑チャイカと共に登場する読み切り漫画が掲載されるなど、その影響力は様々な分野に及んでいる。
このように、ライブイベントやメディア露出を通じてファンとの繋がりを強化・拡大していく姿勢は、特に音楽活動を行うVTuberにとって、画面越しの存在から一歩踏み出し、より強いファンロイヤリティを築き、記憶に残る体験を提供するための効果的な戦略となっていることを示している。
III. 過去への探求：「そにろじ」との繋がり（前世説）
VTuberの世界では、現在の活動者（ライバー）がVTuberとしてデビューする前に、別の名前やアバターで活動していた過去を持つことがあり、その過去の活動者としてのアイデンティティは「前世」と呼ばれることがある。葛葉に関しても、ファンの間では「そにろじ」という名の配信者が彼の前世ではないかという説が広く語られている。
A. そにろじ：デビュー前の配信者像
前世説の提示
複数の情報源において、葛葉の「中の人」または「前世」は、「そにろじ」という名前の配信者であると指摘されている。
そにろじの活動概要
資料によれば、そにろじは主にゲーム配信プラットフォームTwitchで活動していた配信者である。活動期間はおおよそ2016年から2018年にかけてとされ、特にオンライン対戦ゲーム『League of Legends (LoL)』の配信をメインに行っていた。彼のTwitchチャンネル（ユーザー名: soniciscanser）は現存するものの、最後の配信は7年前（資料の取得時点）となっており、活動が停止していることが示唆されている。
交友関係
そにろじは、同じく配信者であるスタンミ（Stanmi）と頻繁にコラボレーションし、親しい友人関係にあったことがうかがえる。スタンミの動画タイトルには、そにろじを指して「暴言厨の友達」と表現しているものも存在する。LoLのチームメンバーとして、しゃるる、にんじゃ、あちゃももといった名前も挙げられている。
活動時期の比較：そにろじから葛葉へ
| イベント | 時期 | 出典例 |
|---|---|---|
| そにろじ 活動期間 (推定) | 2016年頃 ～ 2018年初頭 | |
| 葛葉 VTuberデビュー (個人) | 2018年3月8日 | |
| 葛葉 にじさんじデビュー | 2018年7月30日 | |
| 葛葉 100万人登録者突破 | 2021年9月2日 | |
| 葛葉 音楽メジャーデビュー | 2021年11月10日 |
このタイムラインは、そにろじの活動停止時期と葛葉のVTuberとしての活動開始時期が近接していることを示しており、「前世説」の根拠の一つとされている。
B. 二人を繋ぐ傍証
葛葉とそにろじを結びつけるとされる根拠は、主に以下の点に見られる。
直接的な言及
前述の通り、複数のウェブサイトや書き込みが、葛葉の前世がそにろじであると明言している。これらはコミュニティ内での認識を反映したものと考えられる。
活動時期の符合
そにろじのオンライン活動が2018年初頭から半ばにかけて途絶えたように見えることと、葛葉が2018年3月に個人勢としてデビューし、同年7月ににじさんじゲーマーズとして活動を本格化させた時期は、時間的に連続性を持っている。
参照：「にじさんじゲーマーズ」より4名が新たにデビュー！本日より活動開始！！
声質や話し方の類似性
ニコニコ動画やYouTube上には、そにろじ名義の配信アーカイブとされる音声や動画クリップが多数存在し、これらが葛葉の声や話し方と比較され、同一人物説の根拠として提示されることが多い。動画タグやタイトルには、両者の名前が並記されている例も少なくない。音声比較を意図した動画の存在も示唆されている。
共通の交友関係
特に配信者スタンミとの関係は、両者の繋がりを示す重要な要素と見なされている。スタンミはそにろじと親しい友人であり、頻繁に共演していた。そして、葛葉としてもデビュー後にスタンミとLoLカスタムマッチなどで交流している様子が確認されている。このような共通の知人の存在は、ファンにとって二つのアイデンティティを結びつける強い状況証拠となっている。
ゲームの共通性
そにろじが主にプレイしていたLoLは、葛葉もまた頻繁にプレイし、大会やカスタムマッチに参加しているゲームである。主要な活動ゲームが共通している点も、 circumstantial evidence（状況証拠）として挙げられることがある。
これらの点を総合すると、コミュニティ内では葛葉の前世がそにろじであるという説が、多くの状況証拠に支えられ、広く受け入れられている状況にあると言える。しかしながら、これはあくまでコミュニティ内での推測と解釈に基づくものであり、葛葉本人やANYCOLOR株式会社からの公式な言及は、提供された資料の中には見当たらない。これはVTuber業界においてしばしば見られる状況であり、「前世」の存在は公然の秘密として扱われ、現在のペルソナの維持のために公式には触れられないことが多い。VTuberのアノニミティ（匿名性）が決して完全なものではないことを示す事例とも言えるだろう。
C. 過去の言動に関する論争
そにろじとしての活動期間中の言動が、現在の葛葉の評価にも影響を与えている側面がある。
指摘される言動
一部の資料、特にYouTubeの動画タイトルやコメント欄では、そにろじ時代の配信における「暴言」や「差別発言」、特に障がいを持つ人々に対する不適切な煽りや発言（「障がい者煽り」）があったと指摘されている。
情報源と文脈
これらの指摘は、主に過去の配信アーカイブとされる動画クリップや、それらを取り上げたまとめ動画、関連するコメントに基づいている。スタンミの動画タイトルがそにろじを「暴言厨」と呼んでいる例や、「にじさんじゲーマーズ葛葉さん、障がい者煽り・暴言・差別発言集。」と題された動画が存在し、後者は「転生後の彼です」と注釈を付けつつも、文脈上はそにろじ時代の言動を指している可能性が高い。これらの言動は、主にLoLのような対戦ゲーム配信中の、感情的になりやすい状況下で発せられたものと推測される。
公式な対応の不在
重要な点として、これらの過去の言動とされるものについて、葛葉本人や運営会社であるANYCOLORからの公式な謝罪や釈明、あるいは事実確認に関する声明は、提供された資料の中では確認できない。この問題に関する議論は、主にファンコミュニティやアンチコミュニティの間で、過去のアーカイブに基づいて行われている状況である。
この状況は、オンライン上での過去の言動が、アイデンティティが変わった後も残り続け、現在の活動に影響を及ぼし得ることを示している。特にVTuberのようにペルソナを重視する活動形態において、過去のアイデンティティに付随するネガティブな情報とどのように向き合うかは、タレント及び運営にとって難しい課題となる。オンラインアーカイブは良くも悪くも過去を保存するため、一度発信された情報が完全に消えることは稀であり、それが現在の評価に影を落とす可能性は常に存在する。
IV. 謎に包まれた実像：「顔バレ」情報の現状
VTuberのファンにとって、その「中の人」の素顔は常に興味の対象となる。葛葉に関しても、「顔バレ情報」への関心がユーザーの質問に含まれている。
A. 「顔バレ」情報のステータス
関心の所在
ユーザーが「顔バレ情報」を求めていること自体が、VTuberの素顔に対する一般的な好奇心を反映している。
顔バレに関する言及
資料の中には、「葛葉の前世（中の人）そにろじが顔バレ！」と断定的に述べているものがある。また、比較対象として、ユニット「ChroNoiR」の相方である叶の前世とされる柊みよりが、過去にマスク着用ながら顔出し配信をしていたという情報も存在する。これは、VTuberデビュー前の活動者が顔を公開していた事例があることを示唆している。
視覚的証拠の欠如
しかしながら、最も重要な点として、提供された資料（から）の中には、葛葉あるいはそにろじの実際の顔写真や動画、具体的な容姿に関する詳細な記述は一切含まれていない。 「顔」という言葉が登場する箇所は、ほとんどの場合、VTuberアバター（Live2D/3Dモデル）の表情やデザイン、あるいは会話の中での比喩的な表現（例：「ファイトの顔」、「顔デカすぎだろ」）を指している。LEOという配信者が「顔出し」配信を行ったという言及もあるが、これは葛葉とは無関係である。
アバターへの焦点
したがって、資料内で葛葉の「顔」について語られる際、それは主に彼のバーチャルなアバターの表現やデザインに向けられている。
この状況は、「顔バレ」に関する主張と、それを裏付ける具体的な証拠が資料内に存在しないという明確なギャップを示している。オンラインコミュニティにおける、特に個人のプライバシーに関わるような情報については、主張の存在だけをもって事実と断定することはできず、確たる証拠がない限りは慎重に扱う必要がある。第三者による主張の信頼性を批判的に評価することの重要性がここから読み取れる。
B. VTuberにおける匿名性とペルソナ
業界の慣習
VTuber業界においては、演者（中の人）とアバターを分離し、演者の匿名性を保つことが一般的な慣行である。ファンが楽しむのは、あくまで画面に映るキャラクターとその活動である。
ペルソナの重要性
葛葉の場合も同様で、焦点は「吸血鬼のニートゲーマー」というキャラクターの物語、性格、そしてゲームや音楽といった活動内容に当てられている。
好奇心とプライバシー
ファンが中の人の素顔に興味を持つのは自然なことであるが（「顔バレ」への関心やのような主張がその証左）、それは演者自身のプライバシー保護の必要性や、VTuberというメディアの特性（キャラクターを通して表現を行うこと）と常に隣り合わせにある。たとえ顔バレの主張が存在したとしても、それが証明されていない現状では、憶測の域を出ない。そして、この「顔バレしているかもしれない」という可能性の示唆自体が、ファンの好奇心をある程度満たし、話題を持続させる効果を持っている側面もある。これは、匿名性の高いオンライン上の人物に関する情報が、噂や憶測によってどのように形成され、消費されていくかを示す一例と言えるだろう。
V. 総括：葛葉の魅力の解読
本レポートでは、人気VTuber葛葉について、公式プロフィール、活動内容、そして「前世」や「顔バレ」に関する情報を、提供された資料に基づいて分析してきた。
A. アイデンティティの統合
分析の結果、葛葉という存在は、いくつかの要素が複雑に絡み合って形成されていることがわかる。まず、ANYCOLOR社によって設定・管理された「ニートのゲーマー吸血鬼」という明確な公式ペルソナが存在する。次に、ゲーム配信と音楽活動という二つの柱を中心とした、多様かつ成功を収めている活動実績がある。そして、コミュニティによって語り継がれる「そにろじ」という前世の物語と、それに付随する過去の言動に関する論争が存在する。顔バレに関しては、主張は存在するものの、具体的な証拠は確認できなかった。
B. 多面的な魅力の源泉
葛葉がこれほどまでに多くのファンを惹きつける理由は、単一の要素に還元できるものではなく、複数の魅力が組み合わさった結果と考えられる。
- 卓越したスキルと才能: FPSゲームにおける高い実力や、多くのリスナーを魅了する歌唱力は、彼の人気を支える基盤となっている。
- 魅力的なペルソナ: 傲慢さ、怠惰さ、子供っぽさといった要素と、時折見せるファンへの配慮などが組み合わさった、ユニークで記憶に残るキャラクター性が、強い求心力を生んでいる。
- （認識される）共感性と真正性: 吸血鬼という非現実的な設定にもかかわらず、ゲーマーとしてのライフスタイル、配信中の素直なリアクション、そして（真偽はともかく）語られる過去の（よりフィルターのかかっていないとされる）言動などが、一部のファンにとっては共感や、ある種の「リアルさ」を感じさせる要因となっている可能性がある。欠点も含めて語られる過去の物語が、逆説的に人間味を与えているとも解釈できる。
- 強力なコラボレーション: 特に叶とのユニット「ChroNoiR」は、単独活動だけでは得られない相乗効果を生み出し、熱心なファンコミュニティを形成している。
- 事務所のサポート: 大手事務所であるにじさんじのバックアップが、高い露出度、豊富なリソース、そして多様な活動機会を提供していることは疑いようがない。
C. 結論
葛葉は、男性VTuberシーンを牽引する存在として、またメジャー音楽シーンにも進出するアーティストとして、その地位を確立している。彼の成功は、単なるキャラクターの人気に留まらず、卓越したスキル、計算されたペルソナの構築と維持、戦略的なコンテンツ展開、効果的なコラボレーション、そしてオンラインアイデンティティと過去の物語という現代的な課題との向き合い方など、多くの要素が複雑に絡み合った結果である。公式ペルソナ、実際のパフォーマンス、そしてコミュニティによって形成される非公式な物語との間の相互作用こそが、葛葉というVTuberの魅力と影響力を理解する鍵となるだろう。彼の存在は、現代のVTuberスターダムがいかに多層的で複雑な現象であるかを如実に示している。
